はにログ◎シンプルをほどよく楽しむ

2016年1月から1LDKで彼氏と同棲を始めました。ややミニマリズムに傾倒気味。油断するとすぐに部屋が荒れます。

【読書】cocoon–大人と少女の間。1945年夏、沖縄にて。

白い繭に守られながら
見たことのない雪を
ずっと想像していました。

NAVERのこの記事を読んで、戦争漫画に似つかわしくない絵柄が気になって、楽天koboで購入しました。
すぐに読めるのが電子書籍のいいところだけど、この漫画は紙がのほうがいいような気がする。
matome.naver.jp

ひめゆり学徒隊に着想を得たフィクション。主人公のサンと東京から転校してきた人気者のマユ。看護学生として招集され、ガマ(防空壕)で傷ついた日本兵の看護にあたる。患者の傷口には蛆が群がり、外に運び出せない死体から腐臭が漂い、外は絶えず砲弾が飛び交っている。ガマに人が溢れ、横になって眠ることもできなくなり、精神は極限に達する。そして非情な看護隊の解散命令が下され、少女達は前線へ追いやられていく。

かの沖縄戦では県民の4人に1人が亡くなった。数が途方もないからか、漠然としか想像できなかった恐ろしさが、彼らが遭遇した凄惨さを具体的にイメージできてしまったから吐きそうな気持ちになった。
戦争とは人が死ぬことだと、それだけで怖いことだと思っていた。虫、臭い、レイプ、飢え…。私はタマキさん、甘いミルク、エッちゃん、集団自決の話がずーんと来ました。死んでいる女の子の顔に気持ち悪い虫が這っている場面は特にきつかった。

お母さん、お母さん、お母さん…

もうわたしなんていらないよね
この脚じゃお国のために戦えないし

まるで
花火のあとみたい


恥ずかしながら、ひめゆり学徒隊の悲劇について私はよく知らなかった。漫画で「解散命令」が出された時、少女達と同じように私も絶句してしまった。十代の女子学生をガマから前線へと追い出すなんてあまりに、あまりに酷すぎて涙が手てくる。

お国のために役立てる。サンは出発の日、母親の言葉に軽い口調で答えた。強がりではなく、看護隊に加わることを深刻に捉えていなかったんだと思う。ナイチンゲールのように、傷ついた兵士の治療を手伝う仕事。戦闘の後方の病院で、包帯を巻いたり、お薬を出したり、炊き出しを手伝ったり、そんなイメージだったのかもしれない。役に立てるという誇らしささえ感じていたのかもしれない。泣いていたエッちゃんだって、まさかこれがお母さんと後生の別れになるかもなんてきっと思ってない。
しかし、召集場所となったのは病院とは名ばかりの防空壕だった。彼女たちの仕事は、手足の切断の手伝い、傷口に這う蛆虫の除去、死体運び…。鳴り止まない砲弾の音と仲間の死で、彼女たちは極限状態に追いやられていく。最初は軽口を叩きながら笑顔もこぼれていたのに、次第に表情が失われて行ってしまう様がリアル。

現代の少女が、昔の戦争の本を読んで、夢をみる。
そういう話を書こうと思いました。

著者である今日マチ子さんは戦争を体験している訳でも沖縄生まれでもない。だからこその視点がこの漫画にはある。淡々と進んでしまうから、まるで自分が夢の中で体験しているような、ふわふわとした錯覚に陥る。私は非日常の世界を想像して恐怖し、現実に戻って安心する。けれどサンは逆だ。日常の生活を夢見て、死の臭いが充満する現実に返る。戦争は日常が非日常になることだ。それは本当に怖い。
cocoonに登場する女の子達は現代チックだ。そのまま舞台を現代にかえても違和感のないキャラクター造形、性格。(特にタマキさんみたいなオシャレで可愛い女の子って戦争漫画にはあまり出てこない気がする。)未来のできごととして読むこともできてしまうのが上手いところであり、恐ろしいところでもある。


今日が終戦記念日なので、投稿しました。